ミラノサローネ2017レポート

Chapter01 懐かしく優しい未来へ〜2017サローネトレンド

サローネを見続けて30年になるが、ここ数年これがトレンドと言える動きがはっきり見えない。その背景には、経済の停滞や社会情勢の不安から、現状生活を維持することを変化することよりも大事だと考える人々が多い、という理由があるからだろう。色&質感は人々の見えない「きもち」を代弁する手段だから。

またサローネ自体がもはや世界最大のプロダクトデザインフェスティバルになっており、主催である家具業界の動き以外に、海外からの様々な企業や個人による企画が数多く発表される(市内1000カ所以上)ことにもよるだろう。

そんななか主催者側の主張として、難民問題やテロへの意思表明ととれる「キリスト教精神に基づく慈愛」の表現が感じられた。過去の良き時代に見習い、隣人・環境にやさしく、未来へ向けてしっかり歩もうという「きもち」が、暖色系・中明度でまとめられたインテリアカラーコーディネート、グレイッシュピンクを中心とした色使いのソファや椅子等の表現をさせた、と推察する。もちろんピンクの伏線にはメインターゲットとして中国があることも忘れてはならない。

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メーカー側が個々に発信する「意志」が集まり、結果としてトレンドが見えてくるのだが、それは大義もありながら同時に顧客獲得のための必然でもある。

今年は新たな顧客開拓先としてアラブ圏が出てきたようで、彼らを意識した形や色・質感~ゴールド・金属調の多用、モザイク表現等も散見された。

また先端技術による表現もトレンドのひとつを作り出すが、現在はなんといっても3Dプリンターによる表現であろう。これで作成した1点ものやプロトタイプは毎年様々あるが、ついに金型に置き換えた量産品のランプがKartell社で展示されていたのを見ることができた。日本では品質保証の観点から現時点では決断できないような製品が、「誰よりも先に実現することが大事」な欧州では実現される。そんな価値の違いによる実物がみられるのはやはりミラノサローネの醍醐味だろう。

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街中の企画展示ではデザイナー・企業ともに日本勢の活躍が今年も目立った。

インスタレーションはやはり「未来」を意識させる表現が多く、特に吉岡徳仁氏がLGエレクトロニクスと組んだ展示「S.F_Senses of the Future」は規模の大きさ・シンプルさ・光〜色の見せ方で圧巻し、フォーリサローネの企画展に与えられる賞の最高賞を受賞した。

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パナソニックデザインセンターも、京都の伝統と先端技術を融合させた展示で日本の美意識を丁寧に説明したことでストーリーテリング賞受賞。またイタリア人デザイナーユニット=フォルマ・ファンタズマが造形のシンプルさと、投影像を抽象的なオブジェとして見せることで照明インスタレーションを現代アートのクオリティに引き上げ評判を呼んだ。

こういったハイレベルのアート的展示が無料で見られるのもまたサローネの魅力である。

小倉ひろみ

エディター / 小倉ひろみ

東京芸大デザイン科卒。NECデザインセンター、ミラノのCDM社を経てCMFデザインおよびコンサルティングを行う事務所スタジオピーパ設立、現在に至る。家電から自転車まで多くの製品CMFを手掛けるほか色彩セミナーも行なう。配色造形玩具「いろくみ」の考案者でもある。
多摩美術大学客員教授、青山学院大学・昭和大学・金沢美術工芸大学 各非常勤講師