ミラノサローネ2018レポート

Chapter01 原点に戻る~素のまま・素材のちから~2018サローネトレンド

ここ数年動きの見えないなかで、今年は「基本帰り」といえる展示が目立った。CMFトレンドのメイン要素である色の傾向はずばりベージュ&ブラウン。木の本来の色、生地色の張り地、タンニンでなめした革が、収納やキッチンの面材からソファのカバーリングにまで、主要高級家具メーカー(Molteni/Rimadesio/Cassina/B&B等)の展示空間にはこれがミラノサローネか?と思うくらい穏やかでシンプルで落ち着いた「見慣れた」空間であふれていた。

そんな中、カラーバリエーションが見られる椅子ではやや重い色が目立った(ダークトーン系~テラコッタ、ワインレッド、ターコイズブルー等Moroso/arper/Kartell等)。これも70~80年代の幾何学柄テキスタイルの復刻(Cassina/Kartell)や、50~60年代の椅子の復刻(HAY)つまり原点帰りの視点によるものだろう。

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街中でもデザイン・建築界の要的存在であるTriennale MuseumやINTERNI誌がイタリアンデザインの誕生から80年代までの回顧展を開催、Vitraも歴代製品の回顧展ととれる展示で、こうした流れから~基本に立ち返る~という姿勢が浮き上がってくるのだった。

またシンプルに素材の強さに訴える展示も目をひいた。塊のガラス作品(Wonder Glass)やタイルの巨大壁面(HERMES)はアート作品のような圧倒的存在感を、サスティナブルという視点からは、再生繊維を圧縮した成型家具を展示したRealy、バイオプラスチックによる成型椅子のKartell、砂浜にうちあげられたプラスチックを混入させたSea plasticの椅子、木紛を混入したEmecoの椅子など、環境意識の高さを感じさせる展示は欧州ならでは。先端表現では、スイスのアートカレッジECALがFormlabs(3Dプリンタメーカー)とのコラボで展示即売した作品が、通常の出力表面にみられる積層面がない、ツヤのある美しい樹脂になっており目を惹いた。発色や質感にこだわった素材開発が、機能を追加するだけの製品開発より魅力あるものを生み出せることをサローネは教えてくれる。

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家具業界ではホームオフィスが今後の売れ筋と見定めたようで、ホーム、オフィスといった棲み分けのない提案が目立った。例えばテーブルにIHが付いていて調理もパソコンワークもできる(Kartell)など。また今年はキッチン併設の年だが、キッチンメーカーより調理家電メーカーの単独展示が増加していた。

市内展示の目玉であるインスタレーションでは、ソニーのHidden sensesがBest Playfulness賞を、パナソニックのTransitionsがBest Technology賞をそれぞれ受賞。観光化しつつあるサローネに、もはや日本企業のハイクオリティな展示は欠かせない存在になっている。筆者は全体的に「感じる」ことをテーマとするコンセプト展示が増加した年のように感じた。5感に訴えるしかけを音と映像で提供したHidden senses〜Sony design、時の流れを感じる〜SEIKO、空気を感じる〜Panasonic、感情や癒しとして色の効力を解説〜arper、瞑想やヒーリングのためのツール提案〜wallpaper、スマホやAIスピーカ、パソコン等情報ツールをソフトな存在になじませる提案〜Google soft wear展、等。「見える価値から見えない価値に」今後のトレンドが移行してゆくように感じたことをお伝えして今年のレポートをおえさせていただく。

*ミラノデザインアワード:市内の展示に対して送られる賞

小倉ひろみ

エディター / 小倉ひろみ

東京芸大デザイン科卒。NECデザインセンター、ミラノのCDM社を経てCMFデザインおよびコンサルティングを行う事務所スタジオピーパ設立、現在に至る。家電から自転車まで多くの製品CMFを手掛けるほか色彩セミナーも行なう。配色造形玩具「いろくみ」の考案者でもある。
多摩美術大学客員教授、青山学院大学・昭和大学・金沢美術工芸大学 各非常勤講師